今日見かけた救急車、あれはホンモノですか?(仮)

ハッとしたことを何事も無かったかのように伝えるブログ

ジョイナーが負けた日

足元2番の丸印で
準急を待つ。

反対ホームに
私市方面から電車が入ってきた。

いつものように
扉が空いた瞬間、
降車客が我先にと
一斉に走り出す。
まるで西宮神社
福男レースのごとく。

毎年、あのレースの際、
マスコミがこぞって取り上げるが
枚方市駅では、毎日開催されている。

しかし、毎日見ていると
だいたい同じ人が優勝する。
不思議だ。

5時13分の始発バス出発のときは、
坊主頭でリュックを背負い、
サングラスをかけたビジネスおじさん。

6時5分のバス出発のときは、
これまたリュックを背負い、
ウェーブのかかった長い茶髪、
モアイ像みたいなたくましい顔の
フローレンスジョイナーに似た
元アスリートおばちゃん。
(アスリートは想像)

ほかにも優勝者はいるが、
いずれも共通しているのは、
降車の際に降りるポジションが
こっちのホームにつながる階段から
一つ離れたドアであること。

外側から「まくる」のである。


昨日もジョイナーが
優勝していた。

周りの人達も勝てないと思っているのか
自然と道を空ける。


しかし今日、ジョイナーが
負けてしまった。
いつものように外側からまくったが
スーツケースを持った学生5人が
ちょうどコースをふさいでいたからだ。

圧倒的女王が負けた。

表情を見ると泣いていた(想像)
負けたことがよほど悔しかったのか。

勝ったおじさん達は、
いつもの鬱憤を晴らすかのように
口元にうっすら笑みを浮かべながら
ジョイナーをチラチラと見ている。

反対ホームにいる学生達を
恐ろしい顔で見るジョイナー(想像)


枚方市駅では毎日
こんなにもアツい戦いが
繰り広げられている。

からっぽ

通勤の際に前を通るケーキ屋さん。

オープンしている時間に
お客さんが入っているところを
見たことがない。

たまにバラエティ番組で
「いつも客のいない寝具店は
経営が成り立っているのか?」
とかやっていて、
調べてみたら、テナントリーシングで
まあまあ、儲かってたりする。

この店もそれか。

など考えていたら、
ある日つぶれていた。

そりゃそうだ。

悩み相談

朝、ちょっと遅めの京阪電車

端の席に座り、
いろいろ考え事をする。

香里園で二人の女子高生が
乗ってきた。

その初々しさから
まだ高校生になったばかりか。

あかんあかん。
考え事してるのに。
会話を盗み聞くのは
大人としていかがなものか。

「ちょっと聞いてや」

その一言を聞いてしまっては、あかん。
思考が女子高生に奪われた。


【登場人物】
水色のカチューシャ女子・・・通称 カチュー
タータンチェック柄のナップサック女子・・・
通称 タータン


内容は、カチューのお母さんの
忘れ癖の話だった。

カチューのお母さんは
よく忘れ物をするらしく、
例えば、先月の伊勢の旅行で
持ってきた自分のボストンバッグを
旅館に忘れたり、
カレーの具が入って無かったり、
買い物に行って車を置いて帰ったりと、
忘れものが酷いらしい。

先日もクズハモールに行った際、
お母さんが買った商品が
いつの間にか見当たらなくなり、
家族みんなで捜索。
3時間ほど探した結果、
買った店の試着室の棚にあったらしい。

極めつけは、カチューと妹の
3人で行ったパンケーキ店の帰り道。

お母さんが運転する車が
ガードレールと接触、
自損事故を起こしてしまった。

警察を呼んで事故検分してもらった後、
あ!っと言うので、どうしたん?と聞くと
コンタクトをつけ忘れていたとのこと。


そんなんどうしたらええ?
と困った様子でカチューが言った。

タータンは、そうやなーと言いながら
アドバイス

その助言がなかなかだった。


(タータン)
でも、誰も死んでないからええやんかー。
生きてるだけで幸せやと
思わなあかんで。

(カチュー)
うん、そうやねんけどな。
でもふつう、車忘れて帰る?
荷物両手にいっぱい持って
歩いて帰ってきてんで?

(タータン)
でも、生きてるやん。
車なんていつでも取りに行ったらええやん。
生きてたら、何回でも取りに行けるねんで。

(カチュー)
死ぬとか生きるとか
それ、重くない?

(タータン)
生きてるから
なんでもできるってことを
言いたいねん。

(カチュー)
そっかー。



おい、タータンよ。
闇が深すぎやしないか。

夏の恋(後編)

目が覚めるような快晴。
吉田くんの運命の日は
朝から晴れ渡っていました。

吉田くん情報によると
ユウちゃんとの待ち合わせは
10時ヒラパー前。

僕と愛ちゃんは
みつからないよう
先に入園して待つことに。

待っている間、
暇なので店長の特徴的な
アゴの話をしました。

店長のアゴは、本当にたくましく
顔にアゴがついているというより、
アゴに顔がついていると思うほど
存在感抜群でした。

あのアゴに勝てるのは誰やろうかと
盛り上がってきたところで
吉田くんとユウちゃんが現れました。

吉田くんは、
あまり表情豊かな人ではありませんが
見たことないような満面の笑みを浮かべ
ユウちゃんの隣を歩いています。


二人は急流滑りに向かいました。
僕たちが尾行していることは
知らないので、絶対にバレてはいけません。

最後の落下ポイントが見える位置で
スタンバイ。

いつ来るかと、
さっきのアゴ話の続きをしながら
待ちわびていました。

来ました、来ました。
急流を滑る舟には
両手を挙げた吉田くんが。
ユウちゃんは顔を下に向けています。

出口の階段を降りてきた二人を見ると
遠めでも分かるくらい
濡れていました。

それから、
レストランやジェットコースター、
迷路やモンキーパークをまわり、
いよいよクライマックスの
観覧車のあるエリアへ。

観覧車の真下にある6つのベンチの
1つに二人が腰掛けました。

しかし、その周辺には
身を隠せる場所がありません。

どうしようかと相談し、
結果、売店で帽子を買って被り、
二人の斜め横のベンチに
座ることにしました。

絶対バレるやろと思ったのですが
案外バレないものです。

話し声から吉田くんの苦労話や
頑張ってるアピールが聞こえました。

テンションを上げてきた吉田くんを横目に
愛ちゃんと二人して
「いよいよやな」と声を殺して笑いました。


とそのとき、吉田くんがくしゃみをしました。
同時にすごい量の鼻水が垂れました。
もう1発、そしてもう1発。3連発です。

ハンカチはおろか、ティッシュもありません。
吉田くんは、手で鼻のあたりを押さえ、
何も言わず走って行きました。

取り残されたユウちゃんは、
遠くを見つめていました。


愛ちゃんが帰ろうと言い、
僕も何も言わず立ち、
その場を後にしました。

出口を出たところで帽子を取り、
ほんじゃあまた、と言って別れてすぐ
僕は愛ちゃんの帽子を持っていたことに
気づきました。

「愛ちゃん、忘れ物やで」
呼び止めたところ、
「捨てといて」と言い、
そそくさと帰っていきました。

これは、誰にも言わないでおこうという
愛ちゃんの意思のあらわれと解釈しました。

夏なのに寒気がして
ブルッと震え、家路につきました。

豚まん

大阪駅の中央改札を出てすぐの
セブンイレブン横に
恰幅の良いおばちゃんが2人。

一人は旅行用のキャリーケース、
もう一人はドルガバのボストンバッグを持ち、
二人とも何かを食べています。

丸い何かを食べていて、
特に用事はなかったのですが
近づいてみました。

バッグについているタグには
漢字の表記が。
中国か台湾からの旅行者っぽいです。

何を食べているのか気になり
足元にあるビニール袋を見ると
蓬莱のロゴが書かれていました。

豚まんか。
まあ、大阪に来たから食べるわな。

大したサプライズもなく
その場を後にしました。

蓬莱の持ち帰り専門店がありました。
ここで買ったことは間違いないでしょう。

サッと目線を動かした瞬間、
違和感がありました。

再びレジの横に目線を戻すと
目を疑うような文字が
書かれていたのです。


冷凍商品のみ販売しています。


あの台湾人、冷凍の豚まん食ってる。

見に行かねば。
言ってあげなければ。

来た道を足早に戻ることに。

が、残念ながら、冷凍豚まんは
あと二口で食べ終わるところ。

一口

二口

食べ終わった顔を見ると
とても悲しそうな表情をしていました。

夏の恋(前編)

20歳のとき、
とあるレストランで
アルバイトをしていました。

コンセプトは
オールドアメリカン。
ライフルの模型や
ルーレット台があちらこちらに
置かれた店内は
いつもロカビリーの曲がかかっていました。

そこの厨房で働いていた吉田くん。
当時、22歳という若さでランクルに乗り、
金のネックレス、茶髪という出で立ち。
調理系の専門学校に籍を置きながら
バイトを3つ掛け持ちという
非常に生命力の高い人でした。
車だけじゃなく、学費も全て自身で稼ぐ
すごい人でしたね。


8月。

いつもの如く
吉田くん、愛ちゃん(フリーターの女の子)、
僕といった週4以上勤務の
ヘビーローテーションメンバーの日。

なぜか店長の姿が見当たりません。

つまみ食いでもしてるんちゃう?
(吉田くん)

ボードし過ぎて雪山に逃避した?
(僕)

しゃくれたあごがドアにひっかかって
出られへんのちゃう?
(愛ちゃん)

などと不謹慎なことを言って
笑ってました。

すると、一人の女の子を連れて
現れました。

美女としか形容しようがない女の子。
軽く焼けた肌、
端正な顔立ち、
何より元気があって愛想も良い。
生まれ持ったカリスマ性が
出まくっていて、敗北感を感じるほどでした。

彼女は、関西外大の学生さんでユウちゃん。
夏休みを利用してのバイトだそうです。

吉田くんをチラリと見ると
真剣な表情でユウちゃんを
見つめています。

初対面のお客さんに
「へい、かわいこちゃん」とか言って
距離を縮めることができる人間が
何も言葉を発しません。

これぞ、一目惚れの瞬間。
キュンと音がしたように思います。

吉田くんは、自分がシフトをつくっている
特権を駆使して、
いつもユウちゃんと被るように
組んでいました。

しかし、ユウちゃんは月水木。
吉田くんは火金土日。
完全にすれ違うのです。

なので吉田くんは、
店長に月水木シフトに
代えてもらえないかと
「家の事情で」との理由で
申し出ました。
が、じゃあ火金土日は誰が出るんじゃと
あっさり却下され
結局、週7日勤務になりました。
休みより、愛を優先。
これぞ、恋愛のパワーです。

でも、みるみる痩せていく吉田くんが
当時は気が気でなりませんでした。


ユウちゃんの夏休みが
あと10日ほどで終わるある日の朝、
レザボアドックスのテーマ曲が鳴りました。
ポケベルです。

液晶を見ると
吉田くんからのメッセージです。

\祝/ユウトヒラパーイク\(^_^)/

ユウちゃんとヒラパーに行く約束を
取り付けたそうです。

すぐに愛ちゃんに連絡し、
尾行を約束しました。
ドキドキしますね。

続きはまた。

渇き

中学3年の修学旅行。

旅館に泊まった翌朝、
全員で軽めの山登り。
3グループに分かれ、
その第一陣に僕がいた。

玄関に集合した際、
先生はこう言った。

「すぐに帰ってくるから
何も持って行かなくて大丈夫です」

中学生年代だから
みんなそれなりに
あまのじゃくだ。

それでも、
すぐ近く言うてるからいいかと
みんな何も持たなかった。

僕と数人以外は。


列を成し、出発進行。
登山道を歩く。

恋愛話をしている女子や
しりとりをしている男子。
それぞれの時間を過ごしている。

20分ほど経ち、少しざわつき出した。
まだ着かないのか、と。
でも、到着する様子は無い。

みんなに分からないように
地図を見ている先生がいた。
迷ったと知った。

すぐに着くと言った先生は
汗だくでヘトヘトの様子。
さっきまで涼しかったのに
日が照って、とても暑い。


やっとの思いで
山頂の広場に到着。
しかし、予想外に時間が経っていたので
すぐに下山するとのこと。

喉が渇いたので
お茶を飲む。


ふと目を上げると
こちらを見ている人がいる。
それも一人二人じゃない。

一人が僕の元へ駆け寄ってきた。
お茶を少しくれと。

その後ろに
一人並んだ。

あれよあれよという間に
僕の前には6、7人の列ができた。
最後尾には、先生までも並んでいる。

何も持ってくるなと言われたから。
すぐに着くって言ってたから。
みんな口々に言っている。
そりゃそうだ。


僕のように
列ができているところ以外を見ると
取り囲まれている者、
水筒を奪われた者、
走って逃げている者、
水道を探している者、
置かれている状況はさまざま。

渇くというのは
人間の理性までも奪ってしまうのだ。

帰り道、第一陣の一同は
登山道を小走りで駆け降りた。
先生も気をつけろ!走るな!と
言っているが忘れてはならない。
彼等も渇いている。
割と小走りだ。

第二陣にすれ違わないということは
帰り道も間違えているんだろうが
そんなことはお構いなし。
とにかく、早く水にありつかなければ。


下山後、
昔、この山で合戦があったと知った。

それが渇きを起因としたものかは分からないが
山を駆けている一行はまるで、
現代の武者の一団だ。


山は恐い。