今日見かけた救急車、あれはホンモノですか?(仮)

ハッとしたことを何事も無かったかのように伝えるブログ

渇き

中学3年の修学旅行。

旅館に泊まった翌朝、
全員で軽めの山登り。
3グループに分かれ、
その第一陣に僕がいた。

玄関に集合した際、
先生はこう言った。

「すぐに帰ってくるから
何も持って行かなくて大丈夫です」

中学生年代だから
みんなそれなりに
あまのじゃくだ。

それでも、
すぐ近く言うてるからいいかと
みんな何も持たなかった。

僕と数人以外は。


列を成し、出発進行。
登山道を歩く。

恋愛話をしている女子や
しりとりをしている男子。
それぞれの時間を過ごしている。

20分ほど経ち、少しざわつき出した。
まだ着かないのか、と。
でも、到着する様子は無い。

みんなに分からないように
地図を見ている先生がいた。
迷ったと知った。

すぐに着くと言った先生は
汗だくでヘトヘトの様子。
さっきまで涼しかったのに
日が照って、とても暑い。


やっとの思いで
山頂の広場に到着。
しかし、予想外に時間が経っていたので
すぐに下山するとのこと。

喉が渇いたので
お茶を飲む。


ふと目を上げると
こちらを見ている人がいる。
それも一人二人じゃない。

一人が僕の元へ駆け寄ってきた。
お茶を少しくれと。

その後ろに
一人並んだ。

あれよあれよという間に
僕の前には6、7人の列ができた。
最後尾には、先生までも並んでいる。

何も持ってくるなと言われたから。
すぐに着くって言ってたから。
みんな口々に言っている。
そりゃそうだ。


僕のように
列ができているところ以外を見ると
取り囲まれている者、
水筒を奪われた者、
走って逃げている者、
水道を探している者、
置かれている状況はさまざま。

渇くというのは
人間の理性までも奪ってしまうのだ。

帰り道、第一陣の一同は
登山道を小走りで駆け降りた。
先生も気をつけろ!走るな!と
言っているが忘れてはならない。
彼等も渇いている。
割と小走りだ。

第二陣にすれ違わないということは
帰り道も間違えているんだろうが
そんなことはお構いなし。
とにかく、早く水にありつかなければ。


下山後、
昔、この山で合戦があったと知った。

それが渇きを起因としたものかは分からないが
山を駆けている一行はまるで、
現代の武者の一団だ。


山は恐い。